第16章 健康診断
部屋の前で立ち止まった俺は、千鶴ちゃんに問いかけた。
「…なあ、千鶴ちゃん…。無粋な質問するけど…いいか…?」
「え?う、うん…あ、それだったら部屋に…。」
「ここで大丈夫…。」
不安そうな顔をする千鶴ちゃんに、内心抱き締めたい衝動に刈られたが、
「…千鶴ちゃんは…。」
なんとか言葉を紡ぎだそうとしたが、何故か適当な言葉が見つからなくて。
それっきり黙った俺を千鶴ちゃんの声が我に返させてくれた。
「潤…?」
「あ…わ、悪ぃやっぱ何でもない!忘れてくれ!」
「あっ…潤!?」
驚く千鶴ちゃんを他所に、俺は部屋の障子を締めた。
程なくして、千鶴ちゃんが廊下を進む音が聞こえてきた。
…変な態度取っちゃったな…ごめんな、千鶴ちゃん。
障子を背にズルズルと座り込む。
聞けるわけねぇよなぁ…。
"千鶴ちゃんは、風間さんに言われたこと…心当たりあるか…?“
そしてさっきの頭痛…物語を思い出そうとしたら起きた…。
「これから…どうなっちまうんだろうな…。」
誰かの言葉が聞こえるわけでも無く、ただ俺の声だけが静かに闇に溶けた。