第12章 屯所移転計画
「…あれ、あの人…。」
元治元年、十月。禁門の戦いから三ヶ月。少し肌寒く感じ始めた頃、新選組に新しい人員が増えた。
伊東甲子太郎…あー…この人はなんとなく覚えてる確か…
「オカマ…。」
この後一君からデコピンをもらいました。痛いよ、せめて右手でやってよ。左とか痛いから!
でもどっちにしろ痛いよな、男だし。力あるし。
そのオカ…げふん、伊東さんの到着の報せを受けて近藤さんと土方さんが屯所で迎えてる。
その様子を俺と新八さん、左之さん、一君、沖田さんで中庭の物陰からコッソリと様子を伺ってる。
山南さんだけ廊下に立ったままだけど。
「伊東さんは尊王攘夷派の人間と聞いたが、よく新選組に名を連ねる気になったものだな。」
「長州の奴らと同じ考えってことか。そんな人間が俺らと相容れるのかね。」
「俺なら無理だな…近藤さんもよくあの人を加入させようと思ったな…。」
すると新八さんが思い出したかのように山南さんを見て、
「そういや、山南さんは伊東さんと知り合いなんだろ?」
「えぇ、伊東さんは学識も高く、弁舌に優れた方ですよ…。」
そう言い、廊下の暗がりに姿を消した山南さん。
腕の怪我、まだ引きずってるんだよな…。
「山南さん、最近ますます愛想ないよな。」
「あぁ、ここんとこ滅多に話もしねぇ。まあもともと無駄口叩くような人じゃねぇけどな。」
新八さんと左之さんが呟く。
「…。」
俺と沖田さんは伊東さんが屯所内に入っていくのをじっと目で追っていた。