第11章 分散行動
長い髪を高い位置で縛り、肩がむき出しの他の長州兵とはあまりにもかけ離れた姿。
そして、男の手に握られた最新式の短銃。
「ヘイ、雑魚ども!光栄に思うんだな。てめぇらとはこのオレ様が遊んでやるぜ!」
ドォン!
言い終わらないうちに、あたりに銃声が響き渡る。
そうだ、こいつは、風間さんの仲間の…。
「なんだァ?銃声一発で腰が抜けたか。」
すると、左之さんが俺達を庇うようにして立つ。
「遊んでくれるのは結構だが…、お前だけ飛び道具使うのは卑怯だな。」
「ハッ。長物なんて振り回して、古いんだよ。」
と、突然左之さんが槍をふるう。
びっくりして声あげそうになったぞ。
「…フン。てめぇは少し骨がありそうだな。にしても正面から来るか、普通?」
「小手先で誤魔化すなんざ、戦士としても男としても二流だろ?」
すると、男がひゅう〜っと、口笛を吹き、
「…オレは不知火匡だ。お前の名乗り、聞いてやるよ。」
「新選組十番組組長、原田左之助。」
左之さんの名乗りを聞いた途端、不知火は何故か俺を見てふっと鼻で笑い、
「…お前がそうか…なるほどなァ。」
「…?」
…なんなんだよ、一体…。
「…命拾いしたな、てめぇら。今日のところはここまでにしてやる。新選組の原田左之助。次は殺す。オレ様の顔をしっかりと覚えておくんだな!」
そう言い、不知火は身を翻して消えた。
「忘れるかよ。不知火匡…。俺の槍を避けられた奴は、お前が初めてだぜ。」
その日の夕方、京の町は炎に包まれた。
長州の奴らが火を放ったのだ。
これが世に言う、禁門の変…。