第1章 おかえりの一言/加州清光【☆】
この季節 夜は少し肌寒いはず…なのになんだろう…
とても暖かい何かが私に掛けられている
そんな事を考えていると 遠くから物音がした
「様…まだ寝てんのか…」
はぁ と短い溜息が聞こえたと思うと 私の近くに座ったらしく
「様~」
と 拗ねた子供のように私の名前を呼ぶ
「………凄い…髪さらさらだ…肌も凄く綺麗…」
手の甲で頬を撫でられ 少し擽ったくて目を覚ました
「…加州…君?」
起き上がると彼の上着が掛けられている事に気付いた
「様 やっと起きた」
彼は私の頭を撫でる
「あ…上着ありがとう…それと迎えに行けなくてごめんね…」
「……別にいいけどさ…ここ何処だか分かってる?」
その問い掛けに私は疑問符を浮かべた
「ここ?えっと……本丸…?」
はぁ~ と溜息をまた漏らす
「あのさ 様 確かにここは本丸だけど 男しかいないんだから少しは気をつけてよ?」
と 言い軽く口付けをする
「…か…加州君…!!」
「ははっ 不意打ちは得意だったりするんだよね俺」
そう言い 抱き締められる
「えっと……気を付けます…」
「……じゃあ一番最初に俺に言う事…あるよね?」
「うん……」
私は力一杯抱き締め返し
おかえりなさい。
そう言った。
end