第1章 ノクターン
「おつかれーっス。」
いつも通り声をかけて部室に足を踏み入れると、何時も一番乗りの青灰色の瞳が振り返った。
「オゥ。ちゃんと休んだか?」
「休んだっスよ。けど…なんか頭の後ろがモヤっとするんスよね。」
「偏頭痛か?」
「多分…雨が続いてるからじゃないっスかね。とりあえず薬持ってるんで。」
嘘じゃない。
モデルを初めて、メジャーになりだした頃。
少しずつ頭痛の頻度が増えてった。
それでも、バスケを始めるとそれはウソの様に無くなったし。
だけど、こうやって雨が続いたりするとたまに…頭が痛くなる。
だからこの時期は薬をいつもポケットにいれてあるはず…???
「アレ?!?」
練習着に着替えて制服のポケットを探ってみるけど何時も持っているはずの
頭痛薬が無い。
「なんだ?黄瀬、どうした?」
「あ…いや…あっれぇ?!?」
オレの手元を笠松センパイが覗き込む。
「薬、ねぇのか?」
「いつも持ってるんスけど…あれ?おかしいな…。」
「保健室で貰ってくるか?」
「え…あ…いいっスよ。自分で行くっス。」
コンコン…
センパイと二人の部室にノックの音が響いた。
センパイはすかさず返事をすると部室のドアを開けた。