第3章 Candy Rain
小さな男の子はワシらの腕をすり抜けて母親と思われる人んトコへ駆け出しよった。
海斗とワシ。
上体を起こすと海斗は苦笑いを浮かべた。
「アホか!!ホンマ危なっかしいわ。そんなんで守れるんか?」
「うっせー。俺は頭より身体が先に反応すんの!」
言い合いを始めたワシらの側で腰を抜かしたようにペタンと座り込んだ。
「もう!!二人共心配した!!」
少し呆れたような…それでいて安堵したかのようなの表情を見つめると、
空からは雨粒が一つ落ちてきてまるでが泣いたかのようにの頬を濡らしよった。
の頬を伝う雨粒を指先で追いかけようと手を伸ばすと、また一つと空から落ちてきて地面を濡らしていく。
咄嗟にの手を取って雨宿りが出来そうな場所へ駆け込む。
「本降りになる前にココ入れて良かったわ。」
と二人笑い合っとると不機嫌を露わにした海斗が視界に入った。
「つかさ。何で二人の世界作ってんの!は俺の彼女なの!」
ワシの手からの手を引き離す。
結局話し合いは平行線をたどった。
仲が良かったはずの海斗と関係もギクシャクしてもうた。
ワシと二人の関係は自然消滅…のはずや。
気ぃ抜くと燻り出すへの思いも振り切るように練習に没頭する。
ザーッ…
雨の音だけが響く。
と出会っとらんかったら…ワシが諦めとれば…
との出会いは間違いやったと後悔ばかりが次から次へと溢れてくる。
「翔一先輩!!」
一つ下のマネージャー。
ワシに傘を差し、タオルを差し出す。
「ああ、どないしたん?」
「身体冷やしちゃいますよ!!」
「せやな。おおきに。」
前に“好きや”と言うてくれた。
好意を抱いてくれとるんは有り難いし、まぁ嬉しいわ。
せやけどワシはその思いに応えられんと断った。
髪から滴る雨雫を拭うと、マネージャーの頭にポンポンと手を置く。
こんな事で頬を染める姿は可愛いと思わん事も無い。
せやけど、どうしてもと重ねてしまうワシの記憶。
マネージャーの手から傘を取る。
二人で入る傘…そんな状況かてを思い出すわ。