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【合同企画】相合い傘

第3章 Candy Rain


体育館と校舎を繋ぐ通路に入る一歩手前。
ワシはの姿を捉えた。
その姿を見れば抱きしめとおなる衝動。

“好きやで。”

思わず出そうになった言葉に口を結んで。
ワシは目を合わさんように視線を伏せた。
すれ違う瞬間…微かに触れた小指の指先が熱くなる。
ほんまは…その手を握りたいんや。
ギュっと拳を握りしめてワシは横を通り過ぎた。

「翔一。」

久しぶりに聞く声。
足を止めたワシをマネージャーが見上げてくる。

「すまん。先に行っとってくれ。」

しぶしぶ踵を返したマネージャーの後ろ姿を見送ってから、ワシはへ向き直る。

「久しぶりやな。」
「うん…。」
「…ワシは…
「あの後…海斗と話をして別れたの。」

の口から出てきた“海斗”の名前に胸が苦しくなる。

「ずっと…翔一に声をかける勇気が出なくて。」

泣きそうな表情のが一歩…ワシとの間合いを詰めると、
さっきから熱を持った手を握ってきた。

「。海斗を傷付けたんは事実や。裏切ったのかて言い逃れは出来ん。」

相変わらず髪から滴る雨雫。
首から下げたタオルを手に取ると、がそっとその雫を拭いとる。

「もしも、海斗が私達を責めるなら…私はそれでも構わない。
自分の気持ちに嘘を付く事なんて出来ないよ。」

全てを包み込むような優しい笑顔を見せたかと思うたら、その頬には一筋の涙が伝った。

「自分…ズルいわ。」

頬を伝う涙の跡を追うように口吻を落とせば…愛しさで胸が一杯になる。

「翔一。好きです。」
「分かってるわ。せやけど、堪忍や。ワシの方が好きやから。」

離れとった時間を埋めるようにを抱き締める。

「先ずは…相合い傘やな。」

腕の中のがクスッと笑った。

「CandyRain…でしょ?」
「ハハ…せやな。傘に隠れる必要はないんやけど。ワシらの距離を埋めてくれたんは
雨やからな。」

二人を優しく包む雨なんやとしたらそう呼んだらええ。
誰も居らん中庭でワシらはキスをした。


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