第3章 Candy Rain
そして迎えた水族館当日。
帰りに海斗に話をしようと、前日の電話で翔一と決めた。
話を切り出すまでは、何も気にせずに楽しもうと翔一と話していた通りに、
私達三人は水族館を思い切り堪能していた。
海斗が飲み物を買ってくると自販機へ走っていく。
束の間の二人きりの時間。
誰にも見えない様に、小指だけを絡ませる。
「今日のオシャレは誰の為?」
静かに届く翔一の声。
「分かってるくせに。」
決して視線を交わす事なく紡がれる二人の会話。
「すまん。イジワルや。あまり可愛すぎて…このまま攫ってしまいたなる。」
翔一がどんな表情なのかが気になったけど、
翔一を見上げてしまえば戻ってきた海斗に気付かれてしまいそうで…
私はひたすら海斗が戻って来るであろう方向に顔を向けていた。
5分…10分…。
海斗が戻って来る気配が無い。
「遅いな…アイツ。」
「探す?」
「ココを動いたら行き違いにもなりかねんしな…取り敢えずメールしてみるわ。」
ポケットから携帯を取り出した翔一がバックライトを点灯させた。
画面を見た翔一の目がみるみる見開かれて、その表情は凍りついた様になった。
「アイツ…。」
「どうしたの?」
「アイツ、知っとったんや。ワシとの事。」
翔一の言葉を理解できずに思わず聞き返してしまった。
「アイツからメール着ててん。アカン…図書室で見られとったんや。」
翔一の言葉を受けて私達は駆け出していた。
外に出たであろう海斗の背中を追って。