第3章 Candy Rain
電話に出た時に何時もと違うと思ってん。
声が沈んどる気がした…気のせいやないと思うわ。
『なんで?』
「何時もの“おかえり”と違うてたからな。」
電話の向こうでが笑ったのが分かる。
「悩みあるんなら聞くで?それともワシには言われへん事かいな。」
ワシに言われへん事なんて=アイツの事しかあらへん。
友達の彼女に惚れた時点でワシは腹を括っとる。
アイツに隠れてと付き合うとるんや。
が抱えとるモンはワシも一緒に抱えてやる。
『泊まりのね…旅行に誘われて。断る口実を探してる。』
暫しの沈黙の後に返ってきた言葉は思うた通りやった。
「何を迷おてるん。行けばいいやん。」
思おてもおらん事を口にする。
『翔一は平気なの?』
「ワシかて合宿で何泊もするし。マネージャーは女やからな。」
『だけど、部活とプライベートじゃ違うでしょ?』
「なら言えるか?翔一と付き合うてるから行けませんって。」
アカン…ワシ最低や。
頭では理解しとるつもりやったのについ頭に血が上ってもうた。
『ごめんね。自分で何とかするから。』
電話の向こうから聞こえてくるの声が細くなって震えとる。
「ちょ…待ち…
ツーツーツー…
不安なのはワシだけやない。
辛いのはワシだけやない。
なのにワシは何をしとんねん…
切られた通話画面をホーム画面に戻してメールする。
『、ごめんやで。
ワシも一緒に考えたるから一人で抱えんでな。』
その日の夜。
から返信は無かった。