第1章 ノクターン
「オレ…分からないっスか?」
某ファッション誌の表紙を飾ったポーズをとってみる。
するとますます不機嫌そうになる。
「ハァ…一応、モデルやってんスけど。黄瀬涼太。バスケ部所属っス。」
「ふ〜ん…。」
反応薄ッ!!
あまりの反応にオレは自分がモデルだって事疑いたくなる。
「コレ。貸してあげる。」
そう言ってそのコが差し出した1本の傘。
「え…でも、コレ無かったら濡れちゃうんじゃ…。」
「運動部なら身体冷やしちゃマズイでしょ。」
「じゃあ、オレ送って行くっスよ!」
「いいよ。傘、無くても帰れるし。」
「だけど…
「送って行く」と言い掛けた時に背後から呼びかけられてそのコが振り返った。
「〜!!」
手を振りながら駆け寄ってくる女のコ。
「あれ? 、傘は?」
「忘れちゃってさ。一緒に入れてくれる?」
「もちろん!どうせ家近所だし。」
二人で入るには少し小さそうな傘に、肩を並べて足を踏み出した。
ポツン…と置かれた傘。
彼女が置いていってくれた傘を広げて雨の中一歩踏み出すと
パタパタと傘に弾かれる雨粒の音が聞こえる。
雨に濡れて浮き上がる桜の透かし。
「…。」
友達が呼んでいた名前を無意識に声にしていた。