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【合同企画】相合い傘

第1章 ノクターン


「なに〜涼太傘無いの?」
「入れてあげようか?」

オレが空を見上げてその一歩を踏み出せずに居ると、次々に掛けられる声。
その一つ一つに営業スマイルで爽やかにお断りする。
オレに声を掛けてくる大抵のコは“モデルの黄瀬涼太”がお目当て。
親切心なんてモノは無い。

(傘…持ってくりゃ良かったっスね。)

「ハァ…。」と溜め息を吐こうとした時、オレの隣でふわっとした空気が動いた。
隣にはオレと同じように空を見上げている女のコ。
その横顔は少し憂いを含んでいてなんでか目を離せなかった。

「何?」

オレの視線に気付いたそのコは怪訝そうな表情をした。

「イヤ…朝は晴れてたのになって。オレ、傘無いんスよね。
もしかしてオレと同じっスか?」

オレに話しかけられれば大抵のコは舞い上がっちゃうって言うのに、
このコはそんな様子もない。
それどころか、オレの言葉なんて聞いて無いみたいにずっと空を見上げている。

「あ…あの…オレ、話しかけてるんスけど? オレに話しかけられるなんてなかなか無いっスよ?」

さっきよりも明らかに不機嫌な顔でオレを見上げた。

「誰?」

まさか「誰?」なんて言葉が返ってくると思ってなかったオレは唖然とした。


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