第3章 Candy Rain
駅に着くと丁度改札口を出てくるを見つけた。
伏せた目がスッと視線をあげた瞬間。
初めて会った時のようにワシはまた見惚れる。
小走りに駆け寄ってきたの手を掴んで引き寄せた。
「こない時間に危ないわ。せやけど…嬉しかったわ。」
腕の中でが静かに笑う。
人の目も気にせんと抱き寄せたワシの背中をトントンと叩く。
「雨…降って来ちゃうかも。」
昼間はあんなに晴れとったのに、夕方になると分厚い雲が覆いよった。
天気予報では夜には雨が降り出す言うてたんを思い出して、
ワシは傘を手に駅まで来た事を忘れとった。
アイツの家からは少し離れとるから、
ワシら二人の姿を目にする事は無いやろ。
そう判断したワシはに手を差し出した。
「手ぇ…繋げへん?」
触れ合える機会はそうそうない。
そう願うのはワシのワガママやないはずや。
ワシの手のひらにの華奢な手が置かれると、
指を絡めてギュッと握る。
「ほんまは…何時でもこうしてたいねん。」
「うん。」
が静かに頷く。