第3章 Candy Rain
日課になりつつある電話。
「なあ?幼なじみて事はアイツと家近いん?」
『ん…それなりには。』
「なら、ウチに来いへん? 部屋は広ないけど、一応一人暮らしやし。」
『今吉君一人暮らしなんだ?』
「せや。一人暮らしやで。」
『寂しくないの?』
寂しい…そない事考えた事無かったわ。
いつかは自立するもんやと思うてたし、
ワシの場合はそれが少し早くなっただけやと思うてたから。
せやけど、のこの言葉はワシの中にある“イタズラ心”を擽った。
「せやな…寂しい言うたら…どうする?」
時計の針は20時を過ぎた頃やった。
『…に…行く。』
あまりに小さくてよお聞き取れんかったワシはもう一度聞き返す。
「え?」
『今直ぐ会いに行く!』
ほんの少しのイジワルのつもりやったのに、
あまりに嬉しすぎる反応にワシは一瞬思考が停止した。
「ちょ…待ちい。自分、今何時やと思うてるん。」
『どうして?今吉君は会いたくない?』
電話から聞こえてくる声が少し震えとる気がした。
(ああ…精一杯の勇気を振り絞った言葉やったんか。)
の思いがワシに向けられてると言う実感に胸が熱くなる。
「駅まで迎えに行くわ。」
通話を終了させるとワシはバタバタ準備を始めた。
簡単に掃除して部屋着から着替える。
携帯と財布と鍵を持って玄関を出る瞬間、
目に留まった傘を手に駅までの道を急いだ。