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【合同企画】相合い傘

第3章 Candy Rain


私は空を見上げていた。
海斗には今吉君の傘で帰った事を伝えてある。
私はクラスが違うけど、海斗と今吉君は同じクラスだ。
しかも席が前後ろだと聞いた気がする。
海斗にどんな顔して接しているのだろうか…?
ふと自分の唇に触れて、今吉君とのキスを思い出す。

優しかった…な。

ただ重ねただけの唇。
だけど、十分過ぎるほどに今吉君の思いを感じて私の胸はキュンとなりっぱなし。
優しく抱きしめられた腕の中で、私は涙を流していた。
海斗への裏切り。
秘密を背負わせてしまったことの申し訳なさ。
そんな私の気持ちを案じたように掛けられる言葉は優しくて、
私はその優しさに甘えてしまった。

“ワシかてアイツには言われへんわ。せやけど…もう手放せぇへんで。”

静かに響いた今吉君の声。
それは雨音にかき消されることなく私の心に響いた。
海斗に隠す事になるこの関係。
頭では分かっていても、何をどうすれば良いのかが今の私には判らない。
突然震えたポケットの中の携帯。

『心配せんでええ。アイツにはバレとらん。』

絶妙なタイミングで送られてきたメール。
新着メールを通知する画面に彼の名前を見た瞬間、思わず緩んだ口元。
その内容は甘い言葉でもなんでもなかったけど、
私の事を心配してくれているのだと伝わってきて嬉しくなった。

『大丈夫だよ。心配なんて何も無いから。』

直ぐに送り返したメール。
なんとなく…今吉君が笑った気がした。

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