第3章 Candy Rain
「翔一、悪かったな。昨日アイツ送ってくれたんだって?」
次の日。
海斗から掛けられた声に内心ドキッとした。
「ああ。かまへん。傘が汚れてもうてな。」
ワシがそう言うと海斗も「知ってる。」と溜め息混じりに答えが返ってきた。
「ぶつかっといて謝らねぇとかさ、ありえなくね?」
「そやな。顔まで確認出来んかったけど…恐らくサッカー部やろ。」
「マジ? 俺がいたらなぁ…文句言ってやったのに。」
眉間に皺寄せて唇を尖らせたようにしてボヤくコイツは可愛いわ。
思わず口元を緩めてしもうたワシに気にすることなく海斗は言葉を続ける。
「けど、翔一のお陰で濡れずに済んだってが言ってたからな。
ありがとな。」
「ああ。」
海斗の口から出てくるの名前に一々鼓動が大きくなると同時に、
海斗の「ありがとう」がワシの胸を軋ませる。
ほんまは…そない言葉もらう資格ないんやで?
後先考えずに言うてしまえばラクな事この上ないわ。
せやけど、ワシ一人の問題でも無いという事は理解出来とる。
せやからまともに見られへんねん。
真っ直ぐなオマエの視線がワシには眩しすぎるわ。