第3章 Candy Rain
彼女の唇に少し押し当てるようにして人差し指を立てる。
「ワシが知りたい事は一つだけや。」
彼女の唇に押し当てていた人差し指をゆっくり落として、
ある場所でピタリと止める。
「さんのココ。」
胸の上で指を差すと、彼女の目が見開かれた。
「理性も体裁も要らん。この際アイツの事も無しや。」
真っ直ぐワシを見つめる彼女の瞳は潤んどってキラキラしとる。
そんな眼差しを向けられて勘違いせんヤツ居ったら教えて欲しいわ。
「ワシが好きか?」
コクン…
それはよお見とかんと気付かへんくらいの小さな頷き。
玉砕覚悟のワシにはそれだけで十分過ぎるほどの収穫のはずやった。
傘を持たん手を彼女の背中に回してそっと抱き寄せる。
「。せめて二人きりの時はそう呼んでええな?」
「ん…。」
「、好きや…。」
「ん…。」とだけの返事はか細くて震えとった。
腕ん中の肩が震えとるのはアイツへの罪悪感で泣いとるんやと思った。
「ワシかてアイツには言われへんわ。せやけど…もう手放せぇへんで。」
震える小さな肩を守ってやりたいと思った。
腕ん中の彼女を当たり前として守って行くんはアイツの役目かもしれん。
それでも、小さな肩に背負わせた十字架はワシの責任や。
彼女の牽制の意を含んだ言葉を理解しときながら、
ワシは挑発をした。
雨音が響く傘の中でワシは彼女の額に口吻を落とすと、
俯き加減の彼女の唇へともう一度唇を重ねた。