第3章 Candy Rain
少し濡れたジャケット越しに感じる体温。
直に触れた指先よりも鼓動が大きくなるのが分かる。
“ワシかて…好きな女の子の前ではただのコドモやで?”
その温もりを感じてしまえば、その衝動は抑え切れるもんやなかったわ。
突然のキス。
同意なんてもんはあらへん。
それでも…彼女も同じ思いなんやないかと思えるような自惚れをワシがしてまうほど、
紅くなった頬は十分過ぎる反応やったんや。
柔らかい唇を離せば、彼女の瞼がゆっくりと上がってワシを見つめてきた。
その瞳は動揺を色濃く写しとった。
それでも潤んだような瞳が揺れていれば勘違いしてまうのはワシだけやあらへんと思うわ。
「謝ったりせぇへんよ? ワシ…サンが好きやから。」
雨が降っとるというのに、ワシの世界は無音やった。
目の前で俯く彼女。
まるでこの地球上にはワシらしか居らんような錯覚さえ起こしそうになる。
玉砕覚悟や。
それでも一糸の希望に縋りたいのは、彼女がワシのキスを受け入れた事や。
突き飛ばす事かて出来たはずや。
ましてや、彼女は剣道の有段者。
竹刀に代わるものがあれば彼女はほぼ無敵やろ。
「今吉君…
彼女が紡ごうとした言葉の先が予想出来たワシは、
その言葉を遮るように人差し指を立てた。