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【合同企画】相合い傘

第3章 Candy Rain


「ありがとう。」

少し距離を置くようにして肩を並べると、あの人が肩に手を回してきた。

「濡れとるやないか。女の子なんやから身体冷やしたらアカンわ。」

確かに少しだけ濡れていたジャケット。
私のジャケットの代わりに濡れて行くあの人の腕時計。

「でも…今吉君の腕時計が…。」
「ええよ。こんなもん幾ら濡れたってかまへん。」

見上げた横顔はやっぱりすこし頬が紅い。
“彼”が居る時は露わになる事のない緊張と動揺。
それがひしひしと伝わってくるから私も意識せずにはいられない。

「なぁ?」
「ん?」
「アイツとは 何時から付きおうてるん?」
「海斗は幼馴染みなんだ。だけど、付き合い始めたのは…中学3年位かな。」
「幼馴染みか…。」

少しだけ低くなった声のトーン。

「今吉君は?彼女とか好きな子とか居ないの?」

牽制のつもりでぶつけた言葉のはずだった。
だけど、それが逆効果になってしまう事など予想出来るはずもなく。

「彼女はおらんわ。」
「そうなの? なんか意外な気がする。今吉君のイメージって、
気が利くって感じなんだもん。同級生なんて思えないよね。
なんか大人びててすっごくモテそう。」
「ははッ…それは過大評価ってもんや。」

声をあげて笑ったかと思えば私の顔を覗き込むように腰を曲げる。

“ワシかて…好きな女の子の前ではただのコドモやで?”

切なそうに揺れたあの人の瞳が近づいて来たかと思えば、
唇に柔らかくて温かいものが重なった。



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