第3章 Candy Rain
ある日の放課後。
『ごめん!!担任に捕まった。俺、補講だから二人で先に帰ってて!』
“彼”からの同時に送られてきたメールに、私達は顔を見合わせた。
「アイツ、赤点やったか?」
「赤点じゃなくて、全国模試の補講じゃないかな?」
「へぇ…。じゃ、行こか?」
「うん。」
雨の中へ傘を差したあの人が一歩踏み出した。
その後に続こうと傘を差すと…
ドンッ!!
急に何かがぶつかった衝撃で手元の傘は宙に舞って地面へと着地した。
ふわりと着地してくれればよかったものの、丁度水溜りが出来た場所に着地した傘は
泥水や泥の跳ね返りを受けて差せるような状態でなくなってしまった。
「おい…!!」
私にぶつかった人影は謝りもせずに立ち去って行き、あの人はその背中へ声をかけた。
その声にすら反応する事なく遠くなって行く後ろ姿。
「謝りもせんと…。これじゃ、傘差せへんな。」
私の傘を拾い上げてくれると自分の傘を首と肩で挟み込むようにして支えると、
両手で私の傘を折り畳んでくれる。
泥水に浸かってしまった傘の柄をタオルで拭うと、
その傘を手に持ったまま自分の傘を少し高く掲げた。
「一緒に入ってけぇへん?」
その時のあの人は少しだけ頬を染めて、照れ笑いを浮かべていた。