第3章 Candy Rain
同じ学校で二人で過ごしていた時間。
あの人を紹介されてからと言うもの“彼”と過ごしていたはずの時間は
三人で過ごす事が増えていった。
全国区の強豪校とは言い難いウチのバスケ部ではあるが、
その実力は光速並みの進化を遂げているのだとあの人が笑う。
「海斗は?」
「俺は何にもしてねぇーな…。」
「サンは?」
「私? 私は小さい頃から剣道をしてるの。部活には入ってないけどね。」
「そそ。コイツ段持ち。怒らせたら死ぬかも。」
彼の冗談にあの人も笑う。
「せやけど、姿勢良いのも納得や。初めて紹介された時、
背筋が伸びて綺麗やなと思ったから。」
「うっわ…翔一抜け目ねぇーな。コイツは俺のだから!」
一瞬…誰にも分かるはずのないほんの一瞬。
あの人の自嘲が口元に浮かんだ気がする。
だけど、あの人は何時もの柔和な表情で言葉を紡ぐ。
“人のモンに興味ないわぁ。”
その言葉に私の胸はなぜか苦しくて。
“彼”の視線からは隠れる位置で微かに触れ合う指先。
触れ合う指先は熱くて…ジンジンしている。
こんな些細な触れ合いですら“彼”への罪悪感が湧く。
それはもう…あの人に魅かれてしまっている事に気付いてしまっているから。
あの人の仕草や言葉の一つ一つが気になって仕方が無い。