第3章 Candy Rain
「翔一、今度紹介したいヤツ居るんだけど。」
「なんや改まって。」
「まぁ…な。」
東京に出て来て初めて出来た友達。
その友達が浮かべた照れ笑いが幸せそうで、
紹介したいヤツと言うのは彼女やと直ぐに察しがついた。
“人のモンに興味は無い。”
そう思おとったのに、ワシは彼女に会った瞬間恋に落ちた。
梅雨に入りたての頃。
姿を現した二人は仲睦まじく、アイツの濡れた髪を彼女がハンカチで拭う仕草は、
気の利く彼女さんって感じやった。
「翔一、俺の彼女の。同じ一年。」
「です。」
軽い会釈の後、スッと上げられた視線が印象的でワシは思わず息を飲んだ。
一瞬の沈黙の後、忘れとった息をするかの様に慌てて自己紹介をした。
「今吉翔一言います。バスケ部に入ってます。」
思わず敬語になったワシをアイツがからかってくる。
「翔一なんで敬語つかってんだよ。」
「一応、初対面やからな。オマエと違おてそう言うとこはちゃんとしてんねん。」
とってつけた様な言い訳は苦し紛れやったけど、
そうでも言わんと…
止められんようになりそうで。
イヤ…もう魅かれたのが分かってもうたから自分を誤魔化す為に必死やった。