第3章 Candy Rain
連日続く雨にワシの憂鬱は日増しに大きくなる。
(雨なんて無くなれば良い…)
そないな事無理やと分かっとっても願わずにはおれんワシは弱虫で卑怯者。
雨に流したい過去。
忘れられたらどんなにラクやろ…そんな自分勝手な事を考えつつ、
忘れられそうにない思いがワシの記憶を鮮明に残していく。
裏切りやと言われれば否定はできん。
それでもワシは最善の道を考えた。
あの日も…こんな雨やった。
「なぁ?もうこれ以上、黙っとるのは無理や。アイツにもきちんと話せんと。」
ワシの言葉に彼女は目を伏せて何かを決心した様に静かに頷いた。
「話せば分かってくれる。直ぐには無理かもしれんけど、アイツが納得するまで
何度でも話するし。せやから…そない不安そうな顔はせんどいてほしいわ。」
「責任を翔一だけに押し付けるのはズルい。だから…私も。」
そう紡いだ彼女の唇に人差し指を立てた。
「シーっ。こう言う事は男のワシが責任を取る。
お前はワシに甘えとったらええねん。
どない責められても、ワシが守ったる…な?
せやから笑ってくれ。」
彼女を安心させる為の精一杯の強がり。
あの時の彼女の微笑みは今でも鮮明に覚えとる。
“。好きや。”
決して届く事はないその一言は雨の音に掻き消された。