第2章 相合い傘の約束
薬を飲ませてベッドへ再び横になると、幾分か呼吸が落ち着いて
僕が来た時よりも規則正しい寝息が聞こえてきました。
洗い物を片付けてベッドサイドへ腰を下ろす。
まるで天使のような寝顔が愛しくて触れずにはいられません。
「貴女と言う人は…不思議な方です。」
僕達先祖返りは比較的同士で婚姻する者が多い。
先祖返りが誕生した家は富と名声を手にし、
繁栄する家が多いと言うのは珍しくありません。
ですので、必然的に先祖返りとして命を受けた者は讃え祀られるように
庇護される訳ですが、中には例外の家もあります。
それが僕です。
妖狐の先祖返りと言うのは喜ばしい存在では無かったようで、
幼少期の記憶は小さな空間で閉じ込められるようにして育った記憶しかありません。
出入りするメイドに取り入って…一族一の権力者に取り入って…
やっとの思いであの頃よりも自由を手に入れたのはほんの数年前です。
そして今。
僕は1人の女性に恋をしました。
さん。
彼女はただの人間です。
僕のような先祖返りではない普通の人間。
彼女は僕が先祖返りの妖狐だと言う事をご存知です。
本来、人間にその姿を晒す事などないのですが、
どうしても見てみたいとせがまれて妖狐の姿になると、
彼女は瞳をキラキラさせて「スゴイ!!」とひたすら関心していました。
好奇の眼差しで見られる事の多かった僕には彼女の態度が擽ったくて、
それでも嬉しいと思ったのは今でも覚えています。