第2章 相合い傘の約束
何時もの服を脱いでから私服に着替える。
鏡の前に立って、自分を見つめる。
“そーたんは隠してるつもりでも意外と分かりやすいんだよ”
そうでしょうか。
他人に悟られまいと感情を隠すのは得意でした。
だから、今の自分がある…と言っても過言ではない気がします。
部屋を出る前にもう一度あの人からのメールを確認しました。
『風邪をひいてしまったようです。
お花…見にいく約束。破ってしまってごめんなさい。』
彼女の優しさに触れたような気がして胸が温かくなります。
だけど、それだけでは物足りない。
僕はいつしか贅沢になってしまったようです。
あの人の体温。
あの人の声。
あの人の眼差し。
最早メールや電話では物足りなく感じてしまうほどに、僕はあの人に夢中の様です。
車のエンジンを掛ける。
風邪にはどんな物が良いか…。
考えを巡らせているうちにたどり着いたこの辺りでは一番の品揃えを誇るスーパー。
何種類かのフルーツを手にとって、必要な食材を揃えてレジへ。
風邪をひいている貴女。
そんな貴女の看病が出来るなんて嬉しく思うのは罪でしょうか。
ええ。
わかっています。
それはイケナイ事。
ですが、そんな貴女に触れたいと思う程僕は貴女の事で頭が一杯です。