第2章 相合い傘の約束
『御狐神君。今日は髏々宮さん達と約束があるので迎えは必要ない。』
時計はもうすぐ14時になろうとしています。
二時間程前に送られてきた凛々蝶様からのメール。
「そーたん、そーたん。今日はちよたんのお迎え行かなくていーの?」
「夏目さん。凛々蝶様がお迎えは要らないと仰られてますので。
髏々宮さんや渡狸さんとお約束があるそうですが、何か聞いてますか?」
「相変わらず過保護だね〜。あの三人のことだからそんなに遠くには行かないと思うけどぉ…。」
そこまでで言葉を切った夏目さんが意味深な視線を投げてきました。
「どうしました?」
「ココ!!」
夏目さんが僕の胸の上で人差し指を立てました。
「気になって仕方ないんじゃないの?」
頭の上に着いたウサギの耳をふわっと揺らして首を傾げる夏目さん。
百目の先祖返り…とはやはり気を抜けませんね。
「気になる…とは?」
「う〜ん。ボクから言っていいのかなぁ?! ちよたんも気付いてるし。
そーたんは隠してるつもりでも意外と分かりやすいんだよ。
せっかく、ちよたんがくれた機会なんだから会いに行けばいいのに。」
「お迎えはボクが行くから。」そう言いながら雑誌の頁をパラパラ捲る夏目さん。
その手を眺めていると…真剣な表情の夏目さんが僕を上目遣いに覗き込んできました。
「早く行かないと“未来”まで読んじゃうかもよ?」
この人の本気はシャレになりませんから。
「くれぐれも、お迎えは忘れないように。」
念のためクギを刺すとヒラヒラと手だけを振って応える。
やれやれ…