第1章 ノクターン
後半の練習は何だか釈然としないままだった。
それでも集中力を高めてプレーに全神経を注ぐ。
笠松センパイはオレよりももっとそういう所ちゃんとしてる。
何時もと変わらない檄。
力強い瞳。
逞しい背中。
(っちが見つめているのは…センパイ?)
一瞬過ぎった余計な思考。
それを振り払うように汗を拭って、また駆け出す。
練習が終わった時は何時もよりも疲労感を感じた。
っちと並ぶ笠松センパイ。
二人の姿に胸がモヤっとする。
っちと一緒に帰りたくて、誘うのを迷っていた時。
「、送ってく。」
笠松センパイの声が聞こえた。
「ダメ…っス!」
センパイのTシャツの裾を思わず引っ張った。
「あ?」
「オレ…傘持って無いし!オレが送ってくって決めてたから!!
センパイはダメっスよ!!」
「はぁ…分かったよ。分かったから手離せ!!シャツが伸びんだろ!!バカ!」
ボカッ…!!!
何時もの肩パンをくらった。
「うわぁ〜ん!!なんなんスか!!このタイミングでその仕打ち!」
「うるせー!!シバくぞ!」
オレとセンパイのやり取りにっちは声を出して笑った。