第8章 【テニスの王子様】 白石蔵ノ介
その日の夜、私はキッチンにいた。
「こんなことなら、好きなもの聞いとけば良かった。」
蔵のお誕生日に、何か作ろうと思って。同じ4月生まれだから、お祝いされない寂しさを知ってるから、お祝いしてあげたいな、って思って。
「無難に焼き菓子でいいかな……」
お菓子作りは、そこそこ得意。前からやっていたし。だから、なんの迷いもなく、マドレーヌ作りに向かう。
蔵、喜んでくれるかな……?
いきなりこんなの持って行って、引かないかな……?
でも、せっかくだから、お祝いしてあげたい。
食べて無くなってしまうものなら、いいよね。仮に嫌いなものだったとしたら、誰かにあげちゃってもいいし。大事なのは、お祝いの気持ち、かな。