第6章 【 頭文字D】 高橋涼介
貴方side
ベンチへ腰掛けようと、足を進めた、丁度その時。
私の体は、その場に縫いとめられた。
誰かに、後ろから抱きしめられる形で。
……誰か……じゃない……この腕は、この温もりは……一人しかいない。
「涼介……さん……?」
涼介「優奈……会いたかった……。」
背後から抱きしめられている姿勢で話しかけられたので、彼の吐息混じりのそのセリフは、私の耳に直に入って来た。
それだけで……声が聞けただけで、私は嬉しかった。
でも……
「本当に……涼介さん……なの?」
信じられなかった。
だって、会えないって……。
それに、なんで私がここにいること……
涼介「ちゃんと連絡できなくて、すまなかった。実は……」