第6章 【 頭文字D】 高橋涼介
さっさと秋名山を上り、秋名湖畔の有料駐車場に車を止めた。
この時、17:10。
点灯してからすでに10分が経っていた。
優奈はいるだろうか。
はやる気持ちを抑え込み、車外に出ると、隣に止めた藤原が出て来て、いきなり携帯を見せて来た。
そこには、
『実はもう着いたんだけどさ、誰とでもないの。一人なんだよね、残念ながら。』
という、優奈からの返信があった。
一人……その単語に一安心し、すぐに会場に向かう。
湖畔からくる風が冷たく、これは長くはいられないなと思った俺は、すぐに最奥部の広場へ向かった。
するとそこには……彼女がいた。
啓介と藤原のことなど放っておいて、俺は足早に優奈に近づいて行く。
寒そうに体を縮めて、湯気の立ちのぼるおでんを手に、ベンチへ向かっていた。
その後ろから、俺は彼女を抱きしめた。