第6章 【 頭文字D】 高橋涼介
涼介side
12月の初め頃、優奈にメールを送った。
今年は、自分の予測していた以上に忙しく、一月以上も前から優奈と約束していたクリスマスの予定も、取り消さなければいけないほどの勢いだった。
その旨を連絡したが、どれだけ経っても彼女からの返事はない。
電話をして確認しておきたかったが、あいにくその時間さえ無かった。
怒らせてしまったか。
今年は、俺たちが付き合い始めて、初めてのクリスマスだった。
ほんの少しでもいい……1年に、たった一度の特別な日を、彼女と過ごしたい。
その思いで、徹夜続きでもやるべきことを前倒しに進めていた。
それでも俺の努力虚しく、最後の一作業が終わりそうも無かった……はずだったが、ここで、今年一番のラックが起こった。
再生医療についてのグループレポートの作成だったが、グループメンバー四人の内、二人がインフルエンザで休み、作業にならないため、引き延ばしとなったのだ。
そのため、年内作業は打ち止め。
この課題以外は全て終わらせていた俺は、取れるはずの無かった時間を取ることができた。
それが12月23日のこと。