第9章 特別編 1
まだ4月だけれど、天気がよかったこともあって、走るとそれなりに暑かった。でも、そんなことより、とにかく急がなくちゃ……その気持ちが勝って、まっすぐにテニスコートまで駆け抜ける。
「ハァ、ハァ……英二くん!」
息を切らしながらコートにたどり着くと、とりあえず大声で、私を呼び出した張本人を呼ぶ。
「優奈!」
「あ、英二くん! あの、遅れてごめん! これでも急いで来たんだけど……」
「平気だよん! これから開会式! 優奈、タイミングバッチリじゃーん!」
良かった、まだ始まってなかった……
「優奈ちゃん、もしかしてかなり走ってきた?」
ふと顔を上げると、少し困ったような笑顔で私を気遣ってくれる不二くんがいた。3年時、同じ6組で、英二くんと3人で仲のよかった不二くんに会うのも、卒業式以来だ。
「あ、不二くんおはよう! ちょっと走ったけど、大丈夫だよ!」
「西嶋先輩」
「あ、海堂くん!」
新部長、海堂くんが声をかけてくれた。
「急に来てもらって、すみません。それで……」
「あ、うん、わかってる。開会式始めてていいよ! できることから手をつけていくから!」
乱入しちゃってごめんね、と謝りつつ、ざっと参加校を見渡す。青学は、OBのみんなはもちろん、リョーマくん、手塚くんも帰ってきてた。だけど、それ以外に感じる違和感。