第1章 鈴の音……沖田 総司
沖田
『こんにちは。』
?
『こんにちは。』
やはり、何となくだけど見たことがあるような……。思い出せないけど……。
沖田
『こちらでお世話になっている方ですか?』
?
『それは……。』
その男性が見ていたものは、携帯に付けられた鈴。そして……再び、小さな愛らしい音が鳴り響いた。
?
『そうか……。迎えに来てくれたのか。』
沖田
『えっ?』
?
『 鈴さんを知っているかな?』
沖田
『彼女のお祖母さんと同じ名前です。』
その途端、男性は落胆した表情を浮かべた。だがそれは一瞬で……男性は僕だけに聞こえる声でこう言ったんだ。
?
『日が暮れる前に、ここを出て行きなさい。私のように捕らわれないように。あの子を、孫を……頼みます。』
孫を……?その時に気付いた。彼女の目元と男性が似ていることに……。
沖田
『貴方は?貴方は一緒に……。』
?
『私は……もう、人成らざるもの。私の時間は30年前に止まっているんだ。』
切なげに彼女を見る目が痛々しい。
?
『ありがとう……私に気付いてくれて。あの子に会わせてくれて。だが、早くここから出て行きなさい。』