第1章 鈴の音……沖田 総司
やがて、家族に紹介すると言われ……僕たちがいる裏館から、玄関のある本館へと移動した。
1つの大きなドアの前で立ち止まった。中からは物音1つしない静かな状況で……僕は身構えた。
友人によってドアが開けられた。中に入ると……長細い部屋で、30畳ほどある広いもので真ん中に置かれたテーブルと椅子。
そして、人は男女含め20人ほど。その他に、周りには給仕の人が5人。一番奥には、立派な髭を蓄えた主らしい男性。
決して目付きのいいとは言い難い主らしき人にならい、みんながこちらを向いた。
友人が僕たちを紹介してくれたが、歓迎してくれている素振りはかけらも見受けられなかった。
ただ一人……先程、僕たちのいた部屋を見ていた男性が窓の外に見えた。
僕が提案して外に出てみれば……あの鈴が小さな愛らしい音を響かせた。一度だけ……。
『ねぇ、あの人は?』
高柳
『あぁ、あの方はちょっと訳有りの方で当家の人間ではないの。』
あまり触れてほしくなさそうな言葉遣い。でも、僕はその男性に声をかけたんだ。
どうしても気になったから。二人は池にいる錦鯉を眺めて談笑中だ。
ただ、友人の意識はこちらを気にしているようだったけど。