第1章 鈴の音……沖田 総司
男性の瞳には、薄っすらと光るものがあった。
?
『頼む……あの子を捕らわれないようにしてくれ。』
沖田
『分かりました。』
?
『ありがとう……。』
僕は彼女たちの方に視線を向けた。錦鯉に餌やりをしているようで楽しそうにしている。
そして……振り返ると、そこにはあの男性の姿はなかった。彼女の祖父は、昔に居なくなったまま帰らなかったと聞いている。
僕は努めて明るく彼女に声をかけた。僕の傍から離れないように。
沖田
『ちゃん。そろそろおいとましよう。帰る前に、二人っきりで散歩をしたいしね。』
『うん。ごめんね、百合花ちゃん。日が傾いて来たから帰らなく……ん?』
空からは、大粒の雨が降ってきた。ここで足止めさせるかのように……。
友人は僕たちに屋敷に止まるように言ったけど、僕はその誘いをのらりくらりと交わして……結局は、傘を借りて帰ることになった。
無理強いない友人の振る舞いに僕は、少し気が緩んだのかもしれない。
門の前まで送ってくれる友人。鈍い音と共に大きな門が開いていく。
僕は彼女の手を引いて門から出ようとした時、友人が彼女を呼び止めた。