第1章 鈴の音……沖田 総司
沖田
『ねぇ、ちゃん。残りの金平糖、貰ってもいいかな?後で、また買ってあげるから。』
『もぅっ、仕方無いですね。はい、金平糖。』
僕の言葉を疑問に思うことなく、袋のまま僕に手渡してくれる彼女。
沖田
『ありがとう。それと、約束したこと覚えてる?』
『勿論。でも、どうかしたの?何か……いつもと違うけど。』
沖田
『ちゃんが、友達ばかり構って僕をほったらかしだから拗ねているだけだよ。』
『えっ?そ、そう?ごめんなさい……。』
沖田
『冗談だよ。でも、僕との約束は絶対に忘れないでね。(例え、僕に何があっても……)』
友人が暫くして戻ってきた。高級そうなティーポットや洋菓子を携えて。
振る舞ってくれた紅茶は、本当なら飲みたくなかったんだけど……仕方無く。
それからは、二人はお喋りに花を咲かせていた。僕はと言えば、窓から見える景色を見ていた。
部屋から見えるのは、緑生い茂る林と遠くにそびえる山々。そして……僕は気付いた。
誰かがこの部屋を見ていることに……。年は30代半ばくらいの男性。
心配そうな目でこちらを林の中から見上げていた。その男性を見て、何か引っ掛かるものを感じた。
理由は分からなかったけど……。