第1章 鈴の音……沖田 総司
カラフルな金平糖を購入した彼女は、嬉しそうに頬を緩めている。
小さな愛らしい口の中に、一粒の金平糖を放り込む。この時の少し目を細めて甘みを感じている表情が、僕は好きだったりする。
口元も緩く綻んでいる。可愛いなぁ……ちゃんは。
幾つか回ったお店を後にしては、僕たちは閑散とした林の中を歩く。
葉っぱの隙間から零れ入る木漏れ日が、何故か色褪せて見えるのは気のせいだろうか?
そして……こんな緑の生い茂った林の中にも関わらず、鳥のさえずりすら聞こえない。
どう考えても、おかしいとしか言いようがない。しかし、何の確証もないから理由もなく帰ることも出来ない。
気を付けなければ……。そして、それは一瞬だった。買い求めた金平糖の袋の中に、何かを忍ばせた友人の動作。
そんな金平糖の入った袋を、僕はこの後摩り替えるんだ。二人に気付かれないように。
やがて……洋館が見えてきた。近くに車が走る道路が整備されている。そして、出店も存在していた。
その【普通】さに僕は少しだけホッとした。何かあっても、助けを求められると思ったからだ。
大きな門が開いては、僕たちは敷地の中に一歩踏み出した。それまで鈍い音しかしなかった小さな鈴が、優しい音色を奏でた。
それも、一瞬だけ……。不思議に思いながらも、僕は彼女から目を離さないようにした。