第1章 鈴の音……沖田 総司
彼女が鞄から取り出したのは、小さな巾着。その中には、小さな鈴が三連列なっているストラップが入っていた。
沖田
『これは?』
『お祖母ちゃんが作ってくれたの。よく分からないけど、無事に帰ることが出来るお守りなんだって。』
二つのうち、1つを僕に持たせてくれた。そう言えば……ちゃんのお祖父さんは行方不明のままだって聞いたことがある。
これは何か意味あることなのかもしれない。
沖田
『ありがとう。大事に使わせてもらうよ。ちゃんのように僕も携帯に付けるよ。じゃぁね。』
お礼も込めて、軽いキスを彼女にすれば……花が綻んだようなハニカんだ笑顔を見せてくれた。
【帰る】為の鈴……。僕の嫌な想像は想像だけで終わらない気がしてきた。
鈴にしては鈍い小さな音。しかし、何故か不思議と心が癒されるようだ。
直ぐ様、携帯に取り付けた。
沖田
『理由は分からないけど……不安だな。こんな気持ちは初めてだよ。』
得も言われぬ不安に、僕は色んなことを頭に描き考えた。何なんだろうな……この不安。
それでも、お呼ばれの日が来て僕は二人で電車に乗っていた。ラッシュ時間ではないので、人もそうは多くはないが彼女の手を掴んだまま離せなかった。
まぁ……ちゃんは嬉しそうだからいいよね。
沖田
『携帯に付けてる?』
『あ、うん。ホラ、デザインがシンプルで小さいのに何か存在感を感じるね。』
沖田
『そうだね。』