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【薄桜鬼】合同企画⭐短編小説

第2章 貴方の街のパン屋さん……土方 歳三


翌日、店へ向かう間……思い出したことがあった。



俺がまだ学生だった頃のことだ。部活の剣道に明け暮れていた時、いつだって腹をすかせたものだ。



その時に、剣道を教えに来ていた近藤さんから食パンを貰ったんだ。子供心に食パンかよ……と思ったのだが、口に入れてその考えは一瞬にして消えた。



誰もの心を優しくさせるような、しっとりとしてシンプルな小麦本来の味。俺は、その経験があって今の仕事を選んだと言っても過言ではない。



今、近藤さんは俺の直属の上司。つまり、あの時は自社の取り扱うパンをふるまってくれたのだ。


土方
『余計なものなんか、必要なかったな……。』



独り言を呟きながら、店を急いだ。直ぐに作りたくて仕方ねぇ。



あの時のあのパンは、事情があって一度きりしか食べることは叶わなかった。



土方
『そう言えば……小麦粉が手に入らなくなったと言っていたか。』


学生だった俺は、それ以上は理由を聞くことはなかった。それっきり、今まで忘れていた。



しかし、思い出した今は……面白いもので、10年前にも関わらず味も甦ったのだ。


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