第2章 貴方の街のパン屋さん……土方 歳三
女は笑顔のまま、こう言い放った。
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『すみませんが、契約はこちらの方と決めておりましたので。』
女は俺を見ては、そう言ってのけた。意味はわかるが、理由が分からない。
俺は……初対面の筈なんだが?更に……男は、今にも食って掛かって来そうな表情だ。
ま、俺が一睨みすると逃げるように帰って行ったがな。全く、根性のない奴だ。
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『追っ払って頂いてありがとうございました。』
綺麗な笑みを浮かべて礼を口にするが、俺がいなくとも対処できていた気がする。
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『あ、申し遅れました。当ファームの代表の と申します。』
土方
『俺は、パン工房 薄桜の土方 歳三だ。今日は宜しく。』
今日は下見に来たのだが、どうやら相手は俺を知っていたようだ。ウチの店も含めてだが。
『先ずは、こちらを。』
目の前に出されたのは、二種の小麦粉。粉からは、甘い香りが薫る。
土方
『これはいい代物だ。』
『今回は、そちらをお試し下さい。』
俺は……それを持たされ、体よく追い返された。ま、今日は一先ずこれでいい。