第2章 貴方の街のパン屋さん……土方 歳三
俺は、地元の【パン工房 薄桜(はくおう)】の店長をやっている。
地元では類を見ないパン工房にしては大きな店構え。雑誌やテレビなどで取り上げられるようになったのは、ここ数年前からで……。
更に、店舗を価値あるものにさせようと、知り合いから面白い小麦を栽培している奴等がいると聞いて、俺は直ぐ様その農園を訪ねた。
その農園は、何もかもが手作り感満載で……アットホームなその雰囲気に好感を持った。
そして……全ての従業員が女性。農園と言えば、力仕事もあり男手が必要なイメージがあったがここではどうもそうではないようだ。
土方
『小麦ファームか……。』
店舗のドアノブを掴もうとした時、俺の手は空を切った。そして、店から勢いよく出てきたのは30代前半くらいの男で、俺には劣るが色男タイプだ。
それに続き店から出てきたのは……かなりの美人の女だった。店の名前が入ったエプロンを身に付けているから、ここの人間なのだろう。
男は女をなめ回すような目をしていて、女は……笑顔だが、俺は初めて不愉快さを醸し出した笑顔を見た瞬間だった。
?
『いい条件だと思うんだがな。そっちの立場的にも、箔が付くと思うぜ。』