第1章 鈴の音……沖田 総司
高柳
『ちゃん、お土産のお菓子。貰ってくれるでしょう?』
『あ、うん。ありがとう!!』
僕は一歩、門から外へ出て……その時、お菓子を受け取ろうと彼女の手が僕から離れた。
それは一瞬だった。
僕の目の前の視界は、一瞬で変わった。目の前には立て札が存在していた。
【この場所は地主の高柳家私有地跡。30年前に大火が原因で一家共々何もかも失われた。大火は、付け火という説あり。】
沖田
『ちゃん!!』
幾ら名前を呼んでも、愛しい彼女の声は聞こえない。
沖田
『嫌だ……ねぇ、返事してよ‼ちゃん!!』
どれだけ叫んだだろうか……。一瞬、聞き覚えのある音がしたんだ。
沖田
『鈴……?』
?
『大丈夫よ。ちゃんと取り戻してあげますから。』
それは優しい年配の声だった。僕は鈴を揺らしては音色を奏でた。
そして、それに応えるような小さな愛らしい鈴の音が聞こえた。
空を切るかと思われた僕の手は、確かに何かをつかんでいた。
力一杯引っ張れば、鈴の音と共に彼女の姿が現れた。それと共に……彼女を連れ戻そうとする白い手が現れた。