第1章 君ノ背中。[☆]
その小柄な女子は、振り返るとすぐさま僕に飛びかかるように近づいてきた。
『月島くんっっ!!お疲れ様っっ!!!!』
「あ、華楓ちゃんだ!」
山口がそう言った時には、彼女はもう僕の目の前に立っていた。
――すっごい足の速さ……御主人様見つけて走ってくる犬みたい。
その犬は、キラキラした目で僕を見ている。
正直、部活終わりで疲れている時に来られるのは一番迷惑だ。
そして、それと同等に迷惑なことがある。
「月島に彼女!!?」
「まじかっ!紹介しろよ!!」
「1人だけずりぃーぞ月島ぁ!!」
こうやって突っかかってくる先輩たち。
ほんとうに面倒くさい。
そんな僕の気も当然知らない彼女は、ニコニコしながらあるものを差し出してきた。
「……はちみつレモン?」
タッパーに詰められたはちみつレモン。
蓋を開けると、程よいレモンの香りが鼻をつつく。