第9章 お見合いと賭け 【赤司征十郎】
「久しぶり、征ちゃん」
「ああ、久しぶりだな春乃」
俺は久しぶりに外の世界を見た。今日限定らしいが。
「今日はどこへ行くんだ?」
俺が尋ねると春乃はニッと笑って言う。
「遊園地!!」
「きゃーーー!!」
「おい!春乃!回し過ぎだ!」
「え!?その方が楽しくない?」
遊園地に来て最初に乗ったのがコーヒーカップ。音楽が流れだしコーヒーカップを回すが、春乃は中央のハンドルを握り思い切り回す。当然カップもグルグルとすごい勢いで回る。遠心力のせいで頭が持って行かれそうだ。
「楽しくはない。もう少しゆっくり乗りたい」
「えーー!まぁでも征ちゃんの頼みなら仕方ない」
そう言って春乃はハンドルから手を離した。そして徐々にスピードが落ちて行きゆっくりと回る。
「この方が断然いい」
「えー!!私はグルグル回る方が楽しい!」
「今日は勘弁してくれ。久しぶりに外に出たんだ、まだ慣れてない」
「あ、そうだね。ごめんごめん」
「わかってくれてありがとう」
しばらく回り、音楽が止み回転も止まる。コーヒーカップからおりて深呼吸をする。少し酔ったかもしないな。
「次何乗る?」
「何がいいんだ?」
春乃が近くのアトラクションを指差す。
「メリーゴーランド?」
「そ!」
行こうと言って手を引っ張られて、メリーゴーランドに乗ってしまった。
「征ちゃんは白馬に乗ってね?」
「何故だ?」
「私の白馬の王子様だから!」
そう言って輝く笑顔を見せる。
「そうか」
俺は白馬に乗り、春乃は隣の馬に乗る。コーヒーカップと同じように、音楽が流れだし、ゆっくりと回り出す。カップルの姿もチラホラ見えるが、ほとんどが小さな子供だ。
「征ちゃん!楽しいね!」
「ああ、そうだな」
俺の横でニコニコ笑いながらはしゃぐ春乃の姿に目を離せない。ずっと、ずっと見ていたい。
「あー!楽しかった!」
「ああ。久しぶりに遊んだ」
「遊園地にしてよかった!」
その笑顔に胸が苦しくなる。もうすぐ今日が終わる。これでまた俺はあいつに押さえつけられる。
「……ずっと…」
「え?」
「ずっとこうしていたい……。ずっと春乃のそばに居たい。その笑顔を見ていたい」
「征ちゃん…」
「もうあいつに押さえつけられるのはごめんだ」