第9章 お見合いと賭け 【赤司征十郎】
「あなたが彼に体を譲った理由はなんだった?」
「強くなるためだ」
言葉と共に中学時代の事が思い出される。強くなるために、チームが勝てるためにあいつに体を譲った。高校に上がってからも。
「征ちゃんは今も弱いまま?私は違うと思う。あなたは十分強いわ。彼に頼らなくたってやっていける。私がそばに居る。だからもう彼に頼るのはやめよう」
春乃の言葉が俺の心を溶かす。押さえつけられ続けて凍りついた心を。
「ねぇ征ちゃん。私と一歩進もう?」
「…ああ。そうだな、もうあいつに押さえつけられる生活はお終いだ。俺はもう自由になる。春乃と一緒に」
春乃の頬に手を添え、唇を引き寄せてキスをする。その瞬間、心がすっと軽くなった。
「春乃、ありがとう。助けてくれて」
「ううん。全然いいのよ。私、征ちゃんのためだったらなんでも出来る」
「春乃、お見合いではなく、改めて言わせてくれ」
春乃の髪をそっと撫でる。
「俺と結婚してくれ。必ず幸せにすると誓おう」
「征ちゃん……。うん。幸せにしてくれなかったらほっぺたぶつからね!」
「そうならないようにするよ」
泣き笑いを浮かべる春乃の顔に再度キスを落とし抱きしめた。
この賭けは俺の勝ちだな。