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プロポーズされてみませんか? 【短編集】

第9章 お見合いと賭け 【赤司征十郎】


赤司side
僕の前に座っている女性が僕に笑いかけた。僕と同じような薄っぺらい笑い顔。他人からみた僕の笑顔もこんな風なのか。
「征十郎、どうだこちらの女性は」
父の言葉に思考を一旦停止させ、聞こえがいい言葉を探す。
「素敵な方だと思います」
僕の言葉に女性は「ありがとうございます」と言い、さらに薄っぺらい笑顔を僕に向ける。
「春乃さんどうだろうか、この縁談を受けてくれるか」
父の言葉に疑問符は無い。否定することを許さない威圧的な言い方。
「ぜひ。こんな不束者で良ければ」
「承諾してくれたことに感謝する。それではまた後日に詳しく話をしよう。この後は征十郎と話しでもすると良い」
そう言って父は静かに部屋を出て行った。父の気配が遠くへ行ったことを確認し、目の前の女性と対峙する。
「久しぶりだね、春乃」
僕はきっちりと結んだネクタイを緩めながら言った。
「いいえ。あなたとは初めましてよ」
春乃が先程の笑顔を捨てて言った。
「それでも僕は僕だろう」
「いいえ。あなたと彼は違うわ」
僕を前にして表情を変えずに言う。
「何が違う。僕も彼も赤司征十郎だ」
「違うわ。あなたの目は死んでる。色が宿ってない。あなたと彼を同じにしないで」
その言葉に少し怒りを覚える。
「もういい。何を言われてももう彼が出てくることはない」
「いいえ。そんなことないわ。私はあなたの妻になるためにこの縁談を受けたわけじゃない。あなたを彼の中から追い出すためにこの縁談を受けたの。ねぇ、ひとつ賭けをしましょう」
「どんな賭けだ」
「1日だけ彼に会わせて。1日、彼と話をして、彼があなたを必要だと言うなら私はもう何も言わないしあなたの妻になることを誓うわ。でも彼がもうあなたを必要ないと言ったら彼の中から出て行って」
「ほう、面白い。その賭け、受けよう。じゃあ明後日に彼に会わせてやる」
「受けてくれた事を感謝するわ。それじゃあ私は帰るわ」
「使いを出そう」
「必要ない」
彼女は立ち上がり、ヒールを鳴らして帰って行った。
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