第5章 迎えに行くから 【火神大我】
そう言って春乃は走って行った。俺は追いかける事も出来ず、その場に立ち尽くす。春乃の口から発せられた言葉が頭を巡る。俺は何やってんだ。今すぐにでも追いかけるべきなのに、足が動かない。俺は優柔不断だ。夢か恋人か。その選択はいずれする事になることくらいわかっていたはずなのに。いざそれを目の前にすると何も出来ない。両方諦めたくない。
「ちくしょう……!!!」
そう言って壁を拳でたたいた。
春乃に別れを告げられてから3日たった。けどまだ悩んでる。
ロッカーの扉を開いて練習着に着替える。着替えている間、チームのメンバーからアメリカ行くんだろ?頑張れよ!なんて言葉が飛んでくる。けど、その言葉も今は俺にとって苦痛でしかない。俺はとんだアホだな。女に身を引かせるなんて。
モヤモヤとした気持ちで練習を終え、再びロッカーで着替える。その拍子にズボンから何かが落ちる。それを拾ってみると、手縫いのお守りだった。まだ新しいお守りには手紙が添えてあった。それを広げて読んでみる。
大我へ
大我、この前はあんな風に一方的に別れを告げてごめんなさい。大我はきっとアメリカに行くか、それとも日本に残るかで悩んでいたんでしょ?私と離れるのが嫌って思うのはやめて。私とあなたの夢を、同じ天秤にかけないで。私よりも、あなたの夢の方が何倍も大切なの。だから私とアメリカで悩むのはやめてね。
私は大我と離れるなんて嫌だ。でも私のわがままで大我の夢の邪魔だけはしたくない。だから私は身を引きます。でもね大我、私は離れてもあなたの事を応援してる。だから、あなたの夢見たことをどうか成し遂げて。
これが私のお願いです。
それと
I love you!! Taiga
春乃より
読んでいる間、何かがスッと軽くなったようがきがした。
俺は監督のところの行って
「俺、アメリカ行きます」
と言った。