第5章 迎えに行くから 【火神大我】
アメリカへ行く日。もしかして来てくれるかと思ったけど、やっぱり春乃は現れなかった。もうすぐ搭乗時間になる。俺は座っていたベンチから腰を上げ、入り口へと向かう。
「大我!!」
ずっと聞きたかった声。その声で俺は後ろを見る。そこには走ってきたのか、肩で息をしている春乃がいた。
「春乃、来てくれないかと」
「迷ってたの。でも、どうしても言いたい事があって」
「言いたいこと?」
「私はいつまでも大我を想ってる」
「春乃………」
俺はそっと春乃を抱き寄せる。
「俺、お前と別れるなんて嫌だ」
「大我…」
「春乃………」
俺は抱きしめる力を少し強める。
「待っててくれ。必ず迎えに行く。俺が日本に帰って来たら、結婚しよう」
「大我…!」
春乃は俺の名前を呼ぶとぎゅっと俺の事を抱きしめる。
「私待ってるから、いつまでも待ってる」
「サンキュ」
俺は春乃を離し、鞄を持ち直す。
「時間だから行くな」
俺は春乃に言い、後ろを向いた。
「大我」
名前を呼ばれ、振り向く。
「行ってこい!」
そこには今までで一番の笑顔を見せる春乃の姿。
「おう!」
春乃を背に、俺は歩き出す。
必ず夢を実現させて迎えにいく。だから待ってろよ!