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プロポーズされてみませんか? 【短編集】

第5章 迎えに行くから 【火神大我】


「大我!」
「ん?何だ?」
「ちゃんと集中してる?」
痛いところをつかれた。アメリカ行きの話を聞いた日から、そればかり考えていて練習に集中できてない。悩んでいるのは春乃のことだ。アメリカ行きの話はすごく嬉しい。憧れの場所でもあるから。けど、アメリカに行ったら何年も会えなくなる。あっちとこっちじゃ練習量も違うし、活躍するためにはいろんな事に挑戦しなければいけない。だから春乃とは会えなくなるし、休みがあっても簡単に来れる距離ではない。けれど一緒に行くわけにもいかない。俺は矛盾してるな。アメリカには行きたいけど春乃とは離れたくねぇ。どうしたらいいんだ。
「大我〜?」
春乃が俺の顔の前で手をふっている。その行動にふと我に返る。
「あ、悪りぃ、何?」
「もう!ちょっと気合い入れ直した方がいいんじゃない!?練習にも集中出来てないし」
「そうだな。気合い入れ直す」
そう言って、自分の頬をバチンっと叩いて気合いを入れる。
「っし!やるか!」
「おー!頑張れ!!」
春乃が俺の背中をトンと押してくれる。
「行ってこい!」
春乃の言葉に俺のスイッチが入る。そして練習が再開し、俺は久しぶりに練習に集中できた。
その練習の後、ロッカールームで着替えを済ませ、春乃が待っている入り口へと向かう。
入り口へ行くと、そこには少し真剣な顔をした春乃が立っていた。
「待たせたな」
そう言って春乃の前に立つ。春乃は俺の顔をゆっくりと見上げると、真剣な目を向ける。
「ねぇ大我。あなた私に隠してることあるでしょ?」
「…………」
その言葉に、俺は何も言えなくなる。
「アメリカから誘われてるんでしょ?」
「なんで知ってんだ」
「さっき皆が話してるの聞いた」
「そっか…」
「ねぇ大我。もし私の事で悩んでいるんだったら、私はすごく嫌だ。私は大我の夢の邪魔はしたくない」
春乃はゆっくりと瞬きをする。この先の言葉は聞きたくない。聞くのが怖い。
「大我、私たち別れよう」
春乃が言ったことに、頭が真っ白になる。
「なんで……」
「大我の夢の妨げになるんだったら私は身を引くわ」
そう言って一歩俺から遠ざかる。
「俺は嫌だ!」
「私だって嫌。でも大我の夢のためなの……!」
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