第5章 happyendは望めない
空は、袖で涙を拭った。
「私はね。駿に幸せになってほしい。」
駿は、目を丸くして彼女を見つめた。
「俺はっ…!!
…空と…いたいけれど…っ…」
「…。」
グッと歯を噛み締める駿には、
迷いと後悔の影が見えた。
ふたりは、
お互いをお互いが好きだったと
いうことを初めて告げられた。
だが、駿にはもう 咲輝 という彼女がいる。
シンデレラ
空は、涼しい顔をして笑った。
「駿は、咲輝のことが好きでしょう。」
「…あ、ああ…。」
「じゃあ、私は待っているよ。」
「え…?」
空の瞼には、深い哀愁がこもっていた。
それでも、必死に微笑んでいる。
駿は、その意味がわかった時、
再び、涙を流した。
「…空っ…空ァっ!!!」
「駿…うっ…うわああああ…ん!!」
泣いても、泣ききれない悲痛が襲ってくる。
当然だもの。こんな苦しい思いなんて
するなんて誰だって思わないもの。
だからこそ、この痛みを胸に刻んでいるんだ。
この夢のようだった数日間を
酷い夢をみていたような数日間を
君の隣で、いつまでも忘れないように。