第4章 もう届かない
「…そう…なんだ…!」
空は、精一杯喉元につっかえていた
ものを押し出し、今にも消えそうな声でいう。
駿はあははっと無邪気に笑うと
空を優しい目で見つめてきた。
その目に、空は一瞬のトキメキを覚える。
だが、そんなものはもう
とっくのとうに手遅れなのだろう。
相変わらず、空の
体の中には漠然とした悲しみが漂っている。
こんなところ、いてもたってもいられない。
今すぐにでも逃げ出したかった。
「なあ、空。」
突然の駿の声に、空は肩を震わす。
「なに…?駿…。」
「俺さ。
お前が 友達 で本当に良かった。」
その一言は
空のボロボロの心をさらに傷つけ
真っ暗で身を裂かれるような苦痛をうえつけた。
もう涙も出てこない。
空はにっこりにと笑うと
「…私もだよ。
良かったね。二人共。とてもお似合いだよ。」
空々しいセリフを吐き捨て、
その場から一目散に逃げ出した。
「っ!?空!!?まっ―――――――」
最後に響いた初恋相手の声も
空の耳には届かなかった。